海外営業では、良い製品やサービスを持っているだけでは、すぐに商談や取引につながるとは限りません。
特に海外BtoBでは、顧客にとって自社は「まだよく知らない海外企業」です。
そのため、顧客は商品の詳細を見る前に、まず「この会社は信頼できるのか」「取引して大丈夫な相手なのか」を確認します。
その確認場所のひとつで最も手軽な手段がLinkedInです。
LinkedInは、単なるSNSではありません。海外のビジネスパーソンにとって、企業や担当者の信頼性、専門性、活動実態を確認するための重要なビジネス上の接点です。
本記事では、欧米企業向けLinkedIn運用において累計500社以上の支援経験を持つKYNOVUS海外メンバーの知見をもとに、KYNOVUS代表の岩淵優里奈が、日本企業の海外営業においてLinkedInが重要な理由を解説します。
1. 商品の良さの前に会社としての「信頼性」を確認される
海外営業では、相手が最初から自社のことを知っているとは限りません。
どれだけ良い製品やサービスを持っていても、相手が不安を感じれば、返信や商談にはつながりにくくなります。
海外の見込み顧客は、問い合わせに返信する前、商談に進む前、取引を検討する前に、会社名や担当者名を確認することがあります。
この会社は実在するのか。
どのような事業をしているのか。
海外企業と取引できる会社なのか。
担当者は信頼できそうか。
継続的に活動している会社なのか。
商品の良さを判断される前に、まず「取引しても大丈夫な会社か」を見られています。
LinkedIn上で会社情報、事業内容、投稿、担当者のプロフィールなどが確認できる状態になっていれば、相手は安心して次のアクションを取りやすくなります。
反対に、情報が古い、ほとんど何も掲載されていない、会社としての活動が見えない状態では、商品を検討してもらう前の段階で候補から外れてしまう可能性があります。
海外営業では、売り込む前に、まず相手に「この会社なら話してもよさそうだ」と思ってもらうことが重要です。LinkedInは、そのための信用確認の場になります。
2. 海外の見込み顧客が会社を「知る」場所になる
海外営業では、最初の接点だけで自社を十分に理解してもらうことは簡単ではありません。
メールを送っても、相手はすぐに返信するとは限りません。
展示会で名刺交換をしても、その場ですぐに検討が進むとは限りません。
紹介を受けても、相手はまず自分で会社を調べることがあります。
そのときにLinkedIn上で会社の概要や活動内容が確認できれば、相手は自社について理解しやすくなります。
どのような会社なのか。
どの市場に向けて事業をしているのか。
どのような考え方で顧客に価値を提供しているのか。
こうした情報を見てもらえることで、単なる「知らない会社」から「何をしている会社か分かる会社」へと変わります。
海外営業では、まず知ってもらうことが重要です。
LinkedInは、海外の見込み顧客が自社を知るための入り口になります。
3. 継続的に認知を取り、「何度も接点」を持てる
BtoBの海外営業では、一度のアプローチで商談化することは多くありません。
相手には今すぐニーズがないかもしれません。
すでに競合製品を使っているかもしれません。
予算やタイミングが合わないだけかもしれません。
だからこそ、一度反応がなかった相手をすぐに終わりにするのではなく、継続的に接点を持つことが重要です。
LinkedInでは、つながり申請、プロフィール閲覧、投稿、リアクション、コメント、メッセージなどを通じて、海外の見込み顧客の前に何度も自然に現れることができます。
この「何度も見たことがある」という状態は、海外BtoB営業において大きな意味を持ちます。
まったく知らない会社よりも、以前から何度か目にしている会社の方が、相手の中で思い出されやすくなります。
必要なタイミングが来たときに候補に入るためには、普段から認知を積み上げておくことが重要です。
LinkedInは、一度きりの営業ではなく、継続的に認知と接点を積み上げるための基盤になります。
4. 必要になったときに、相手から連絡できる状態を作れる
こちらがアプローチしたタイミングと、相手にニーズが発生するタイミングが一致するとは限りません。
今は必要ない。
今は予算がない。
今は別の会社と取引している。
今は情報収集だけしている。
こうした相手でも、数か月後、あるいは一年後にニーズが発生することがあります。
そのときに重要なのは、相手が自社を思い出し、連絡できる状態になっていることです。
メールだけの場合、過去のやり取りが埋もれてしまうこともあります。
展示会で名刺交換しただけの場合、相手が名刺を失くしてしまうこともあります。
LinkedIn上で会社や担当者とつながっていれば、相手はあとから投稿やプロフィールや会社情報の検索を活用し、メッセージを送ることができます。
しかしLinkedIn上で接点が残っていれば、相手が必要になったタイミングで再びたどり着ける可能性が高まります。
海外営業では、今すぐの商談だけでなく、将来の商談機会を逃さないことがとても重要です。
LinkedInは、相手が必要になったときに連絡できる状態を作るための接点になります。
5. 採用や現地体制づくりにもつながる
LinkedInは営業だけでなく、海外人材や現地パートナーとの接点づくりにも役立ちます。
海外展開では、顧客だけでなく、代理店、業務委託先、採用候補者など、事業を支える関係者からも会社情報を確認されます。
そのときにLinkedIn上で会社の方向性や事業内容、活動実態が分かる状態になっていれば、相手は安心して関わりやすくなります。
小さな会社であっても、海外から見たときに「どのような会社か」が分かる状態を作っておくことは、将来的なパートナー開拓や現地体制づくりの面でも意味があります。
営業活動だけでなく、海外事業全体の信頼形成にもLinkedInは活用できます。
LinkedInがないこと自体が大きな「機会損失」になる
LinkedInは、ただ投稿するため、いいねやコメントをもらって満足するためのSNSではありません。
また、単にメッセージを送るためのツールでもありません。
海外営業においてLinkedInは、見込み顧客が会社を知る場所であり、信頼できる相手かを確認する場所であり、継続的に認知を取る場所でもあります。
さらに、相手にニーズが生まれたときに、連絡先として機能する場所にもなります。
つながり申請を送る前。
メッセージを送った後。
展示会で会った後。
商談を検討する前。
あるいは、数か月後に相手側でニーズが発生したとき。
相手はどこかのタイミングで、あなたの会社を確認し、思い出し、連絡しようとするかもしれません。
そのときにLinkedIn上の情報が整っていなければ、知らないうちに選ばれる機会を大きく逃していることになります。
KYNOVUSでは、LinkedInを単なる投稿ツールではなく、海外BtoB営業における信頼形成、継続接点、将来の商談機会を生み出す営業基盤として捉えています。
海外営業で成果を出すためには、今すぐ案件化する相手だけを追うのではなく、将来顧客になる可能性のある相手に対して、継続的に「知っている」「信頼できそう」「必要なときに連絡できる」状態を作っておくことが重要です。
著者
岩淵 優里奈(Yurina Iwabuchi)
株式会社KYNOVUS 代表取締役・創設者。元株式会社キーエンス初代女性営業。営業職として数々の社内ランキングで1位を獲得。60か国以上での渡航・ビジネス経験をもとに、日本企業の海外営業・海外マーケティング支援を行う。現在は、LinkedInやSales Navigatorを活用した海外BtoB営業支援を中心に、海外事業の戦略立案から実行まで一貫してサポートしている。
本記事は欧米企業向けLinkedIn運用において累計500社以上の支援経験を持つ海外メンバーの知見をもとに、日本企業向けに再構成・執筆しています。

